Half-broken Sun
「壊れかけた太陽」シリーズに寄せて
田 中 正 巳
「壊れかけた太陽」・・・ なんと恐ろしいタイトルだろう。
何が起こっても不思議でない現代社会によく似合う言葉ではないだろうか。
「父と子の季節」シリーズを十年ほど続けたあと、圧倒的な力の自然と人間の非力さを対比させるような形で、太陽と人間を配置した「祈り」という作品を何点か描いたことがあった。その何点目かに描いた作品の太陽がグシャグシャになって、私には一瞬、壊れかけた太陽に見えた。
そしてその時、ハッと体の中を駆けめぐるものがあった。「太陽が壊れる?・・・」私は自問自答した。地球上のちっぽけな人間から見て絶対的な存在に見える太陽もいつかは必ず壊れる時が来る・・・。その事を人間は科学として知っている・・・。
その果てしない絶望の中で、人間が生きて行くエネルギーはどこから生まれるのか?・・・人間のできること、またしなければならないことは何なのか?・・・の問いかけとともに、太陽が壊れるイメージが現代社会の人間が抱えている危機感とオーバーラップする感覚が、自分の絵画制作の動機として大きく膨れあがっていった。
無意識のうちに偶然、画面上に現れた形象が私にすばらしい贈り物を届けてくれたことに感謝しているが、同時に大きな難題も突きつけてきたのである。
その日以後、私は自分の作品に「壊れかけた太陽」というタイトルをつけるようになった。( 2004年1月)