現代の危機意識のイメージ化

佃  堅 輔 (美術評論家)

「壊れかけた太陽」 和紙・アクリル・墨 194×270㎝ 2004年 作品番号1-05
「壊れかけた太陽」 和紙・アクリル・墨 194×330㎝ 2004年 作品番号1-06
「壊れかけた太陽」 和紙・アクリル・墨 194×330㎝ 2004年 作品番号1-07

 鮮烈な朱赤が、形ならぬ形を激しく主張しながら、一体どこへ向かうのか。どろどろとした赤い溶岩に、あるいは凝固した血の不気味なかたまりにも見える。
 黒々とした帯状のものに取り囲まれた不定形のものこそ、画家のいう〈壊れかけた太陽〉なのだ。

 人間の信頼関係を描く〈父と子の季節〉のシリーズが十年間続いたが、ある時画家は、人物に太陽を配置した。が、何点目かに描いた太陽の形がグシャグシャになった。その時一瞬それが壊れかけた太陽に見え、絶望感に襲われたという。
 この危機意識こそ、地球上の現代人が抱くものなのだ。このイメージは画家にとって執拗にふくらみながら、このシリーズへと駆り立ててゆくのだ。
〈壊れかけた太陽〉は、さらに展開と深化をみせてゆくだろう。

( 2004年7月号 アートクロス雪・月・花Vol.1 掲載 )

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